カテゴリー
ぶんがく

四万十の流れのように生きて死ぬ

発売日: 2021年6月9日
著 者: 小笠原 望
出版社: 清流出版
ページ数: 223p
ISBN: 978-4860295066

読了 2時間30分~3時間

自称、「田舎医者」の小笠原望先生の、最新の本である。小笠原望先生の講演は聴いたことがあったが、はずかしながら著書を読むのは初めてであった。

「どうして、今頃になって、先生の著書を手に取ったのか?」というのは、ちょっとした奇妙なめぐり合わせがあったからだ。そのめぐり合わせとは・・・。

職場の回覧でちょっとした冊子が回ってきた。図書館流通センターだったか、どこかの出版社だったかはっきりとしないが、「図書館発! 47都道府県、本の旅!」という小冊子があって、47の都道府県毎に、司書さん?が選んだ本が5冊ずつ紹介されていた。何気なく高知県を見ていると、坂本龍馬や紀貫之、今年話題になった牧野富太郎関連の本の中に、なんと、この本が紹介されていたのだ。

これは、読んでみなければならないと思い、さっそく読んでみた。

著者の前書きにもあるように、この本は、書下ろしである。時代が前後したり、同じような内容が重複したりしていることもあるが、全体を通してしっかりとした一本の筋が通っている。それは、「医者として、人間をまるごとみようとしている」ことである。それは、気持ち(想い)だけのものではなく、望先生は、患者さんの最期の時に側で看取るだけでなく、葬儀にも出られている。それが特別なこととして書かれているわけではなく、自然な流れの中で当たり前のこととして書かれている。

望先生が、自身のお父さんとのことを書かれているが、本を手に取って読んでもらいたいので、詳しくは書かないが、このお父さんがあって、望さんがあるのだろうと思ったしだいである。

この本にも出てくるが、望先生には、4歳年上の「N先生」という兄がいる。どうして、「N先生」なのかと言えば、お兄さんは、高知県では名の知れた教育者なのである。かなり前のことであるが、N先生が本を出された時には、「あとがき」に望先生が寄稿されていた。そこにこう書かれている。

臨床医を実践されている望先生は、この頃から自分の進む方向を明確に持たれていたのだ。そして、実践されている。上の文が書かれたのは平成2年であり、今から35年近く前のことである。

望先生は、お父さんの影響もあり、川柳をされている。この本にも、要所要所に先生の詠まれた川柳がちりばめられている。兄のN先生も川柳をされており、言葉に巧みなお二人が実家に帰って酒など酌み交わしながら、どんな話をしているのだろうと想像してしまう。お二人の宴席の隅で、ぜひ話を聞いてみたいものである。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です