発売日: 2018年9月4日
著者: 村田 沙耶香
出版社: 文春文庫
ページ数: 168p
ISBN: 978-4167911300
読了 1時間30分~2時間
「コンビニ店員として生まれる前のことは、どこかおぼろげで、鮮明には思い出せない。」
第155回芥川賞受賞作であるこの物語の書評の中には、「どうして芥川賞をとったのか、よさがわからない」というものがある。一介の読書好きには、芥川賞に相応しいかどうかはわからないが、よさはわかる。正直、よさがわからない人がいることが、わからない。
私自身は、今、巨大図書館で働いている。もちろん臨時職員である。時間を守り、職場や利用者の方に迷惑をかけないように体調を管理し、清潔さを保つように心がけている。それは、当たり前のことである。そして、巨大な図書館のほんの一部であるが、自分の働きが少しでも役にたっていると考えると、少しの充足感が味わえる。ある意味、それは会社勤めでも同じことなのではないだろうか。
彼女は、それがコンビニだったのだ。死語になってしまったが、「会社人間」などという言葉もあったではないか。生活の中心がコンビニであり、自分が生き生きと活動できる場所が唯一コンビニなのだ。
彼女の生活は、多少極端でもある。しかし、彼女の生活は、自分たちの生活の延長上にあるともいえる。
いろいろな意味で共感できる部分があった。