カテゴリー
ぶんがく

ニコラ・テスラ 秘密の告白

発売日: 2013年01月
著者/編集: ニコラ・テスラ, 宮本寿代
出版社: 成甲書房
ページ数: 237p
ISBN: 9784880862972

読了 8~10時間

1943年1月7日の深夜、マンハッタンのニューヨーカー・ホテル。身寄りもなくこのホテルの一室にひっそりと暮らす86歳の老人が、その波乱万丈の生涯に終止符を打った。人生の最期を看取る者など誰もいない、あまりにも孤独な死であった。翌朝メイドによって老人の亡骸が発見されると、知人たちの手によって葬儀が催されることになった。葬列は厳冬のマジソン街を葬祭場に向かって粛々と進んでいった。ところがちょうどその頃、老人が息をひきとったホテルの部屋では、その静かな死とは対照的に慌ただしい事態が巻き起こっていた。葬列がホテルを出るのを待っていたかのように、数名のFBIの捜査官たちがこの部屋に押し入ったのである。
               (「ニコラ・テスラ 秘密の告白」解説より引用)

すらっと読めないと感じた単行本は、まず、「解説」から読むことにしている。この引用部分を見ても、ニコラ・テスラの凄さ、生き様が見て取れるようだ。解説によるとこの本はテスラの残した著作の2冊から成るという。第一部として収録されているのは、「My Inventions:The Autobiography of Nikola Tesra(1919刊)」第二部として収録されているのは、「The Probrem of Increasing Human Energy(1900年刊)である。

第一部は、自伝と銘打ってあるだけあって、比較的読みやすい。テスラの幼少期の様子や、家族のことが書かれていて、いかにして天才が生まれたかを垣間見ることができる。彼は、自分の考えた発明や発見を頭の中で具体化し、それを頭の中で装置を組み立て実験をする。そして、実際に実験をした時には、頭の中で組み立て考察したたものと同じ結果が得られたそうである。正に、天才である。テスラの発明や、無線システムについても触れられている。

打って変わって、第二部は、テスラの技術的な話が多く、また、何度も同じような話が出てきて読みこなすには結構時間がかかってしまう。ここで、投げ出してしまう人も多いのではないか。自身もどれだけ理解できているかわからないが、とにかく最後まで読み切ってみた。それは、テスラを敬愛しているからである。ある程度、テスラの業績や人となりを知っていたから読み進めることができたのではないかと思う。

エジソンとの「電流戦争」。直流電流と交流電流の戦いとも言える。今日の発電・送電システムはほぼ交流を採用しており、テスラのシステムの勝利と言える。直流は、送電による電力ロスに耐えられなかった。簡単に電圧を変えられる交流電流は、電圧を上げて送電することにより、ロスを減らすことができたのである。送電線の電気抵抗Rとして、送電損失 P’=R・I2、電圧を10倍にすれば電流 I=P/V は10分の1、損失は100分の1となる。

「世界システム」「フリーエネルギー」などの言葉は、どうやら、「無線電送技術」のことを指しているようで、コンセント無しで、世界のどこにいても電気が利用できるというのはすばらしい発想であり、実際に何度が実験も行われていた。ワイヤレス電力伝送は、「テスラコイル」の原理の一つの応用であると考えても良いと言われていることから、彼の考えたものが何十年も経って、花開いているともいえる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です