ボタニカ
朝井まかて 著
出版社 : 祥伝社 (2022/1/12)
発売日 : 2022/1/12
言語 : 日本語
単行本 : 494ページ
ISBN-13 : 978-4396636173
寸法 : 19.4 x 13.1 x 3.1 cm
読了時間 7~8時間
うーん、最後まで読んだけれど、最後まで富太郎さんには共感できなかった。著者のまかてさんは、膨大な資料や論文を見られてある程度史実に沿って書かれていると思う。リアル牧野に近いのかもしれないが、やはり、何というか、自分が凡人過ぎるのか、感動も共感もあまりなかった。
読み始めた時に、NHKの朝ドラが始まっていたので、ボタニカの主人公は当然、神木隆之介だった。初めのほうは、彼にイメージを重ねながら読んでいたが、だんだん、神木隆之介では、どうにもならなくなってきた。饒舌で行動力があり、恐ろしいほどの自尊心を持ち、人を巧みに利用しながら自分のやりたいことを実現していく。確かにある意味すごい人物だが、共感や尊敬の念は持てなかった。彼の業績はすごいだろうが、自分自身が草花の分類や生育にあまり興味を持っていないこともあるかもしれない。作者のまかてさんが、どのような牧野像を描きたかったのか聞きたいものである。
彼の自叙伝では、最初の妻である猶(なお)のことは、触れられてない。地元の高知でも、スエコザザにまつわる、最愛の妻「寿衛子」のことは有名であるが、猶のことは、ボタニカで初めて知った人も多かったのではないか。(後述する、『草を褥に 小説牧野富太郎』大原富枝 著を読んでいなければ)
借金生活での人生最大の危機を救ってくれたのは、資産家の池長孟(いけながはじめ)であり、標本30万点を3万円で買い取り、本人に寄贈するという。大正15年頃の3万円と言えば、MUFJ お金の育て方によると、4000倍ほどなので、現在では1億2千万円になる。こんな奇特な方とも、仲違いをしたりする。
彼自身の自叙伝は読む気にはならないが、地元の作家でもある大原富枝さんの『草を褥に 小説牧野富太郎』は読んでみたいと思っている。