先日、髪を切りに行った。わたしのお気に入りは、安くて速い某散髪チェーンである。普段は平日ということもあり、すぐに呼ばれるのだが、いつもより待たされて、やっと、と思い椅子に座った途端、店内に「ガしゃーーん」という大音量が響いた。
いったい、何があったのかと、音のする方角を見ると高齢の方が、消毒用のスプレースタンド共に転倒をしていた。その大きな音は、立派?な消毒用のスプレースタンドが倒れる音だったのである。
すぐに、店の方が数人で倒れた方を抱き起して、「大丈夫ですか?」と何度も声をかけていた。その方は「だいじょうぶです」と、言っていたが、高齢の私の母親が転倒で何度も骨折をしているので、とても心配になった。
そのまま抱きかかえられるようにして、散髪用の椅子に運ばれた。その後は、何事もなかったように、散髪をしていた。
大音量の正体は、立派な消毒用のスプレースタンドが倒れる音だったのであるが、どうしてそんなことになったのかは、すぐに理解できた。高齢の方は、足腰が弱くなっているようで、杖を使ってやっと自力で歩いているような状態だった。家族の方に乗せて来てもらったのだろうか。自動ドアをくぐると、「手指の消毒をお願いします」の張り紙と立派な足踏み式のスプレースタンドが置いてあった。杖でバランスを取りながら、不自由な足で踏もうとした時にバランスを崩したのだ。
コロナの感染者が少しずつ減ってきている昨今であるが、こんな、日常の部分にも暗い影を落とし続けている。
自分の散髪が終わり、外に出ると50~60歳くらいの女性の方が、車の中でスマートフォンの画面を見ていた。どうやら、あの大きな音は、外には聞こえなかったらしい。